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3月の連作

2020年3月の諸誌紙から、気になる連作をピックアップします。(順不同)

     *

山中律雄「甲乙」7首(角川「短歌」3月号)
一首目〈平面に見ゆる広場の幾ところ雨残れるは起伏あるらし〉からちょっと、おっとなる。平面に見えるけれど、ところどころ雨が残っているということは、そこに起伏があるということだろう、といううた。視点と、その述べあらわし方にたちどまる。〈泥に泥かさねるごとき倦怠に今朝も朝よりうつしみ重し〉の比喩に納得する。「今朝も朝より」の「朝」の重なり、「泥に泥」のかさなりがスライドするようで、音韻的たのしみもある。作風のようなものを全体に感じられる一連であった。


田村元「炭酸泉」5首(「うた新聞」3月号)
田村さんもぶれずに、というべきか、いくつかの話題をながいこと突き詰めつづけている歌人である。その〈徹底〉がおもしろさへ転換しているようにおもう。〈「ほ」と打てばホッピーと出る変換の予測の先にホノルルはあり〉、みずからにもっとも近いもの「ホッピー」、そして遠いものとしての「ホノルル」。近いところと遠いところの接合はある定石だが、ぶれずに「ホッピー」であるところや、「ホッピー」「ホノルル」の語感のたのしさなど、作風というか歌柄というか、そういうものを感じさせる。


岡井隆「唄とノルマ」7首(「未来」3月号)
岡井さんの月詠を1月号から読んでいて、どれもたのしいのだが、親近感もあってこの3月号の作品を挙げる。一首目〈室内のフロア歩きのノルマでは「箱根の山は」を唄ひつつ行く〉、「歩きのノルマ」が課せられているようで、「箱根の山は」うたいつつ、それをこなしている様子である。からだのためだろう。二首目以降、この話題がころがりころがりして、その奔放な感じがいかにも岡井さんらしい。それが最後の七首目でかえってくる、という構成。


早川晃央「お別れを待つ」12首(「COCOON」15号、2020.3)
挽歌一連。〈九五歳の死因の第三位・老衰は祖母の息をとめたり〉、死をどのように理解し解釈するか、というところに関係性やおもいがにじむ。おのずから、ではなく、能動態でかかれているところにたちどまった。〈十五年前の一五の夏休み祖母が誘ってくれた「コスモス」〉、具体的な数字とさっぱりとした語り口が、「コスモス」結社内同人誌である「COCOON」の誌面ではいっそう迫ってくる。〈寒いねと言い出したとき「お別れ」の順番が来て経が始まる〉、タイミングはいつもむずかしいし、いきなりやってくる。ディテールに真実がこもるような一連だった。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎『温泉』ご購入はこちらから。現代短歌社のオンラインショップです。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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