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1首鑑賞364/365

信号が点滅したから走り出す赤になったので歩き出す
   水沼朔太郎「ごしゅうぎ」   

     *

水沼さんの「(たぶん)(ひとりで)週刊短歌」という企画の第4回より。

わたろうと歩いていて横断歩道が見えてくる。ちょっと先に信号があって、「点滅したから走り出す」。赤にかわれば渡れなくなってしまうからである。間に合うか、間に合わないか。間に合わなかった。「赤になったので歩き出す」。

身に覚えのある一場面である。「走り出す」→「猛ダッシュする」というのが順接だろうか。しかし「赤」になったら円が一周するというか、もうどれだけ走ってもダメなのである。すぐそこが、瞬間、永遠に遠くなる。変な感じだ。三句切れで対句。単調な文体が、意識をなぞるようでもあり、ひそむ不思議をにじませるようでもある。

「から」と「ので」の差にもおもいが至る。好みのせかいなのかもしれないが、「から」には「おのずから」という気分があるのに対し、「ので」のほうには「論理を呑み込む」ような感触がある。「赤になった」の字足らずが「つばをのみこむ」時間を生んで、そこから「ので」が捻り出されてくるような気持ちになる。しかし句跨がりであることが、初読ではまったく気にならなかった。対句の力学によるものか。このあたりも、不思議がにじむようなおもいで読んだところである。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎『温泉』ご購入はこちらから。現代短歌社のオンラインショップです。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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