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1首鑑賞355/365

味の無きいささかの物食ひをれば身の衰へて汗にじみ出づ
   窪田空穂『郷愁』

     *

「病臥」という題の一連から。「肺炎を病」んで寝込んでいるようである。

これも風邪やらで寝込んだときの、食べ物に「味の無き」感覚をおもいださせる。薄味なのではなく、ふだん食べているものに味を感じなくなるのである。なにを食べてもおいしくない。しかし「いささか」でも食べないことには元気が出ない、薬が飲めない。それでおいしくないなあ、とおもいながらも、時間がくれば飯を食うのである。

結句「汗にじみ出づ」が眼目だろう。「身の衰へて」は病気によるものとも、老いによるものともおもわれるが、その身体感覚と、「汗にじみ出づ」という現れとを、ここでは結びつけて考えているわけである。味覚の麻痺とは対照的に、なにか冴えた感受がある。そのアンバランスさえ、病床ということをおもわせるような一首である。


※歌の引用は、大岡信編『窪田空穂歌集』(岩波書店、2000)によります。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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