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1首鑑賞349/365

坂の途中の横山邸の思い出の躑躅の花のむらさきの色
   佐佐木幸綱「スクラム」「歌壇」2020.1

     *

30首連作の掉尾の一首。「横山邸」とは「横山大観」邸であると、連作を読むとわかる。それはまた、「野球ともだち」の「横山君の家」でもあり、野球少年のころの「思い出」の家であったわけだ。ふたつ前のうたに「大谷石の塀が長い家だった」とある。坂をのぼりながらつづく塀と、そこに咲いていた「躑躅の花」がおもわれてくる。

一首は〈の〉をつらねていくスタイルで、たとえば

あじさいの花の終りの紫の濡れびしょ濡れの見殺しの罪
     佐佐木幸綱『群黎』
ゆく秋の大和の国の薬師寺の塔の上なる一ひらの雲
     佐佐木信綱『新月』 (※ルビ省略)

といった先例、先蹤がある。連体修飾をつくる〈の〉によってつぎへつぎへところがされるように、読者は景をつないでいくことになる。坂を「たどる」が、いつのまにか、記憶を「たどる」にスライドしていくところも、一首の読みどころだろう。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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