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1首鑑賞345/365

蟬しぐれ沈みたり盛りあがりたりその波にわが体重ののる
   渡辺松男「赤鴉」「歌壇」2017.9

     *

蟬がいっせいに鳴いてあたかも時雨のようであるさまを「蟬しぐれ」という。急に鳴き始めたとおもったらいよいよ激しくなって、そうかとおもえばいきなりぴたっと鳴き止む。まさに「沈みたり」「盛りあがりたり」である。「沈みたり盛り/あがりたり」は句跨がりで、ここを五・七で切って読むとき「モリ」がきもち高くなる。そのあたりも、どこかで蟬の〈鳴き・止み〉をおもわせる。それが「波」のごとくに夏の空間を浸す。

「わが体重ののる」というのが、一首の読みどころではある。気分の浮き沈み、という言い方があるから、蟬の〈鳴き・止み〉に気分を添わせる、というのはなんとなくわかる。一方で、体重をのせる、という言い方もある。うわべの気分だけでなく、体ごといくくらいの気持ちで、ということだ。

蟬の〈鳴き・止み〉に、体ごともっていかれるくらい、気持ちが、心がさらわれている。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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