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1首鑑賞343/365

あぐりの丘サイロも見えて長閑なり芝ざくら咲き神楽島見ゆ
   野中ヨシ子『夕あかり』

     *

あぐりの丘」というのは長崎市にある体験施設で、「あぐり」はagricultureからくるのだとおもうが、どこか高いところに立って眺めれば、「あぐりの丘」の「サイロも見え」るし、「芝ざくら」が「咲き」、遠くには「神楽島」が「見」えるという。目に入るものをつぎつぎと並べ言い、その眺望を伝えてくるうたである。

サイロというのは飼料を保存する円筒状の小屋で、それがそうだと見えるので、おそらく近景である。そこから、芝ざくら、神楽島、としだいに遠景になっていく。作者の視線のながれを追うように、景色のひらけていくさまを読むようなここちがある。遠近はともかく、視線のうつろいを追体験するような一首と言えるだろう。「見えて」「見ゆ」のあいだに差し挟まれた「咲き」にひとつアクセントがあり、また「長閑(のどか)なり」でひと呼吸おく感じが、下の句のたたみかけを際だたせる。結句でひらけていく韻律にも注目した。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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