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1首鑑賞325/365

川の眺めのむこうにみえてかすてらの黄のいろどりに煤ける寮は
   狩峰隆希「短歌研究」2019.9

     *

三句「かすてらの」に虚を撞かれる。なめらかな初ニ句の流れと視線の先に、まさか「かすてら」を見留めているとはおもわない。それでつづきを読む。すると、川の向こうに見えているのは寮のその建物であることがわかる。建って時間が経つのだろう、煤けてそれは立つ。

ここでもういちど「かすてらの黄の」という部分を考える。かすてらの黄の、そのように煤けている、というふうに読むのが妥当とおもう。そのように、の部分がここでは「いろどりに」と表されている。このワンクッションが、比喩を比喩と読ませる。一方で、三句に差し挟まれて「かすてらの」は「黄」を導く枕詞のようにも映る。五七調のイメージだ。唐突、というところがそう思わせるのだろう。しかし寮のボディはおそらく直方体に近く、かすてらのそれを想像させる。想像させつつ、「いろどり」があくまで主眼にあるのだから、ボディの形状は前景化しない。ことばのうえでの喩に、実景としての喩がまつわるような一首である。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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