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1首鑑賞319/365

連休の最中冊子をかかげ持ち宗教伝道に戸口訪ふ人
   永良えり子『水湧くところ』

     *

宗教「伝道」ということばにおどろく。先入観では宗教「勧誘」だった。ひとりないしふたりで戸口訪問する。わたしも何度か経験がある。人生苦しいとき悲しいときつらいときどうやって乗り越えていますか、と問われ、返答にこまっていると、さらにやわらかい表情で話がつづく。どうやって切り上げていいかわからず、それでも話を聞いているうちにずいぶん時間が経っており、なにか冊子を受けとってその日はおしまい、ということが多かった。同じ人が二度三度と訪ねてくることもある。

連休の最中であってもそれは変わらないのだろう。こちらの「連休」の気分とはマッチしないが関係ない。その「最中」、冊子を「かかげ」持ち、である。〈わたし〉はいささかネガティブな印象を受けているように見える。けれども「伝道」は、すこしもネガティブではない。淡々として事実を伝えることばだ。

歌集はじめのほうに、

御雑煮をととのへしあとの俎板に花形人参の切れ端残る
トラックの小さき荷台にかたちよき大松一本括られて過ぐ

といううたがあって、それぞれ「人参」と「松」の存在感がながく残る。掲出の一首も同じで、「宗教伝道」ということ、宗教伝道のその「人」の姿そのものが、ながく残る。〈わたし〉の受けた印象よりもはるかにつよく。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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