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1首鑑賞314/365

林間のひとすぢの道車窓より一瞬みえて人あゆみをり
   小池光『梨の花』

     *

車窓から見えたのは「林間のひとすぢの道」であり、そこをゆく「人」の姿である。バスや電車で通り過ぎたのならまさに「一瞬」であろう。なに見るでなく窓の外を眺めていたら、おもいもよらず人の姿があったのである。「ひとすぢの道」というのも、こんなところに道があるとは、というおどろきをあらわすようでやや大仰だ。それにくわえて「人」の姿まであったのだから、一瞬、まなざしは強くなったであろう、と想像する。

おもいだすのは

ちちのみの秩父の山に時雨ふり峡間(はざま)ほそ路(みち)に人ぬるる見ゆ
   齋藤茂吉『あらたま』

の1首である。時雨がふって視界がぼんやりしている。眺めていれば、山と山のあいだのほそい路に、人がぬれているのが見える。この視線の送り方が、掲出の1首とかさなって映る。

ちがうのは、「車窓より一瞬みえて」である。「一瞬」なればこそ心象風景のなかをながくながく、歩きつづけるひとりの姿が浮かんでくるようだ。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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