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1首鑑賞312/365

呼ばれたと思へば娘はみどりごにおかあさんはねと言つてをりたり
   花山多佳子『鳥影』

     *

おかあさん、と呼ぶ声がするので自分のことだろうとおもって振り返る。けれども娘は、わたしではなく孫のほうを向いている。ああ、自分にかけられたことばではなかったのだ。娘が、そのまだ幼いわが子に向かって「おかあさんはね」と話しかけていたのだった。なんだか切ない。

おかあさん、おかあさんとわれを呼ぶ娘の姿がいっぺんによみがえる。歳月が、ひといきに思い返される。娘も母になったのだ、ということをあらためておもう。さびしい時間のはじまりのようでたじろぐ。振り向いて、おもいちがいだったときの恥じらいが、ほのかにも浮かぶ。なんでもなかったような顔をしながら、こころを立て直すような一場面がえがかれている。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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