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1首鑑賞304/365

一日の終りはピッと終れずにたどり着きたるホッピーの前
   田村元「ラングドシャ

     *

連作一首目に

われの名のカードをカードリーダーに通してピッと今日が始まる

があって、この「ピッ」との対応を意識して読む。出勤の場面だ。カードをかざすと「ピッ」と音が鳴る。今日が始まる、という心持ちになるのだ。ここでの「ピッ」は擬音語である。いっぽう掲出歌の「ピッ」は擬態語だ。もちろん退勤のときも「ピッ」とやるのだろうが、場所は居酒屋、ホッピーの前である。退勤してまっすぐ帰るのではなく、今日という日を終えるのにいくぶん時間がかかっているようだ。ピタッと、あるいはピシャッと、ということばが近いか。ハイおしまい、今日はここまで、というふうにはいかず、酒場へ吸い寄せられてここはホッピーの前。結句でそう言われると、われを俯瞰するもうひとつの眼差しが浮かんでくる。ピッと終われないのもまた良し、というほのかな肯定感とユーモアが一首にはただよっている。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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