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1首鑑賞303/365

青空にサドルを少し近づけて春より早く春休みが来る
   森本直樹「ままちゃりで遠くまで」

     *

春になりそうでなりきれないころ、春が来るよりもさきに春休みがやって来る。その、どこかおちつかない感じをとらえつつ、しかし春も、もうすぐそこまで来ている。サドルを少しあげて、ちょっとだけ行動的になる。外へ身体が向く。青空に近づける、という言い方は見立てにはちがいないが、どこかで「青空」を求めるような気分と寄り添う。

穂村弘『シンジケート』に次の一首がある。

「自転車のサドルを高く上げるのが夏をむかえる準備のすべて」

こちらははっきり「高く上げる」と言っている。準備の「すべて」と相まって、気分の盛り上がりを伝えてくる。対して掲出歌は、「青空」とのかかわりあいのなかで、自転車のサドルを上げる。やわらかく、あたたかくなっていく春の陽をもとめるような感覚だろう。結句、春休みが「来る」ということが、春への予感を決定づけるようにひびく。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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