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1首鑑賞293/365

絶滅危惧種なること母に言いたれど鰻重届いてしまう帰省日
   松村由利子「失くした鰭は

     *

帰省した子に、母はいいものを食べさせたい。だから子が、「絶滅危惧種だから」と理路を説いても、やっぱり「鰻重」を注文してしまう。注文したものは届いてしまう。届いてしまっても食べたくないものは食べたくない。絶滅に加担するわけにはいかない。が、現にいま目の前にある鰻重については、やはり食べるしかないだろう。

むかしはそうでもなかった、あるいは、そういうふうには認識されていなかったこと。それが、現在の目で見れば、現在の価値観に照らせば、批判の対象となるようなことは、いくらでもある。鰻についても、そのひとつとおもう。鰻重=いいもの、という価値観のなかで育ち、ずっとそうしてきたことを、いきなり変えろ、というのはなかなか難しい。そういう母の立場もある。

そういうことをわかっていて、だから「届いてしまう」なのだ。母を責めるというよりも、どうしたらいいのだろう、という困惑が、1首にはこもっている。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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