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1首鑑賞292/365

パチンコ屋の前に並んでいるうちの一人がマンホールを撫でている
   森本直樹「からっぽ

     *

朝から商店街をとおることがあると、ときにパチンコの開店前の列に出くわすことがある。列、という日もあれば、なんとなく人だかり、という日もある。けっこうな人がいて、おどろいたりもする。パチンコにくわしくないので、何に並んでいるのかいまいちよくわからず、とくにどうするでもなく通り過ぎる。

並んでいる人のやることはそれぞれだ。スマートフォンをなにとなく操作したり、煙草を吸ったり、ぼんやりしたり、うろちょろしたり、友達どうしだろうか話したりしている。そんななかの「一人」が、「マンホールを撫でている」。あるなあ、とおもう。いや、実際に見たことがあるわけではない。けれども、そういう「一人」の姿がとっさに浮かんでくる。だから、という言うべきかこのうたも、その行動に対する解釈や、こちらがどうおもったか、についてはいっさい述べていない。ただ、その光景だけが切り取られている。通り過ぎていく。

パチンコはこれをやる人とやらない人がいる。ただそれだけのことである。むろんパチンコに限ったことではない。「やらない」人が気づいていないところに「やる」人の世界があって、それがときどき交差する。たとえば「マンホールを撫でている」ところに、意外にも交点があったりするのだ。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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