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1首鑑賞284/365

新幹線車内にひびき乗客の提げたる荷より犬の鳴くこゑ
   島田幸典「志ん朝」

     *

まさか乗り物に犬が乗っているとはおもわずぎょっとしたことがある。そのときも新幹線で、まさに掲出のうたのごとき状況であった。専用のカゴや袋に入れられて持ち運びができるようになっているのだ。初句二句は、まず「ひびき」を感知する。犬のようだが、犬とまではおもいえず、なんだろう、とおもうにとどまる。二度三度きこえて、やはり犬だと確信する。声のほうをたどれば、乗客の提げた荷に犬がおさまっている。それほど大きな犬ではないのだろう。連れて乗せるわけにはいかないので、あくまで荷物として持っているのだ。それはそれで、なんだか奇妙である。そういう思考と観察とを経て、ようやく、結句「犬の鳴くこゑ」と断じるに至る。新幹線だからしばらくは停まらない。以降、おりおり、犬の声が気になりつづける。結句まで先延ばしにされた結論と、それに沿うような体感に、一首の肝心があるようにおもう。さっぱりとして簡潔な説明が、状況に対する不慣れな感じを演出している。「歌壇」2019.7月号より。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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