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1首鑑賞263/365

ひかり濃きもののたたかひ沼を蹴る白鳥をつかむ一月の水
   米川千嘉子『牡丹の伯母』

     *

ひかり濃きもののたたかひ、とまず大きく言って何のことかと思えば、白鳥と水のたたかいである。たとえば『夏空の櫂』のころの、スケールの大きな歌群をおもう。白鳥が沼を「蹴る」のに対し、そのあしを一月の水が「つかむ」。逃れようとする白鳥、逃すまいとする水の〈動〉が力強くひかる。むろん白鳥は飛び立つわけで、そういう意味では勝者にあたるのだが、この1首においては勝敗うんぬんはどうでもよくて、むしろ体言止めで示された「一月の水」の質感をこそ注視すべきなのだとおもう。沼を蹴って飛び上がる白鳥のあしの先からしたたる水がひかりを受けて濃く、ねばりづよく、沼面とつながる。それを逆に、「一月の水」が「つかむ」と言って反転させ、そこに双方向的な「たたかひ」を見出したところに、1首の力が宿っている。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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