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1首鑑賞256/365

肉体のなかを肉体がくぐり抜けてくるやうな息だぎりぎりのこゑ
   藪内亮輔『海蛇と珊瑚』

     *

さいきん読んだ次のうたをおもいだす。

音のなかに音を打ち込む強さもて未明の雷雨迫り来るなり
   栗木京子『ランプの精』

「音のなかに音を打ち込む」と「肉体のなかを肉体がくぐり抜け」は構造としてはほとんど同じだが、感触はやはりいくらもちがう。それは動詞「打ち込む」と「くぐり抜け」のちがいであり、また「音」と「肉体」のちがいである。前者が「強さ」を導いているのに対し、後者は「ぎりぎり」を引き出している。肉体が肉体のなかをくぐり抜ける困難をおもう。ぎしぎしとして痛みをともなうその「ぎりぎりのこゑ」である。四句切れののち、絞り出すように結句で述べられる「こゑ」。この1首そのものが、その体感をあらわしているようにもおもう。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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