FC2ブログ

1首鑑賞255/365

君の書くものだけ読みて過ぎてゆく会う前までがそうだったように
   永田紅『春の顕微鏡』

     *

君とはどんな人だろうか。文章を書くのが仕事の人であれば、それを読むことになる。そうでなければブログとか日記とか手紙とかメールとか、ともかくこのごろ、君とはぜんぜん会えなくて、「君の書くものだけ」を読んで日々が過ぎていく。「だけ」という限定が、会えない日々のさみしさをわずかににじませる。でも「会う前まで」はそれが当然で(いや、たしかにそうです)、だからことさら思う必要のないことなのかもしれない、と、みずからなだめるような下の句である。この「会う前までがそうだったように」という洞察はしかし永田紅だなあ、とつくづくおもう。当たり前のことが、過ぎ去ったあとではわからなくなってしまう。それをこうやって、はっとするような形で掬いとる。さいごまで読んで、さみしさよりも、高揚感のほうが残るのだ。「会う前」のあの気持ちが、今によみがえるようである。
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

最新トラックバック

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR