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1首鑑賞257/365

われをもつとも傷つけることができるのはわが息子 桃に指をぬらして
   大口玲子『ザベリオ』

     *

歌集全体をとおしてみても、「息子」の存在が随所で一冊を引き絞っている。率直なおもいが、痛ましくもせまってくる。「われをもつとも傷つけることができる」ものとして、いっしゅん「息子」を見ている。その「指を」、桃にぬれた指を見ている。「傷つけ」うるものとしての指を見つめている。愛情とか、大事とかいうことばを持ち出すこともできるが、もっと直接的で生々しくきつい距離感がここにはある。はりついてはがれない距離に、われとわが息子がいる。だからこそ、傷はときに致命的で、われをとことん苦しめる。うっとりする余裕もなくなるほどに、きっと傷つけるだろう。それはもっと先の話で、あるいは生涯こないかもしれないが、しかしそんな場面を予感させるほどには、息子はすでに、われの手元をはなれつつある。そのさびしさがもう、すでに、自虐的にわれを苦しめているのだ。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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