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1首鑑賞245/365

葦辺行く鴨の羽交ひに霜降りて寒き夕は大和し思ほゆ
   志貴皇子(万葉集・巻第一・六四)

     *

結句「し」は強意をあらわす。「葦辺行く鴨の羽交ひに霜降りて寒き夕」にはことさら、「大和」のことがおもわれることである、という意。「大和」について、[訳]では「故郷大和」となっている。これは「難波の宮に幸す時」に作ったうたと詞書にあることからくるのだろう。はじめ大和=日本(この国)とおもって、日本という国の季節感や情緒といったものをしみじみおもううたかとおもったが、そうではなかった。ここでは地名としての「大和」がうたわれている。眼前の鴨から「寒き」という体感へうつろうところ、身に沁みて郷里をおもうひとつすがたが浮かんでくる。


     *

引用は伊藤博[訳注]の「新版 万葉集 一 現代語訳付き」(KADOKAWA)より。葦辺=あしへ、鴨=かも、羽交=はが、霜降=しもふ、夕=ゆふへ、大和=やまと、とそれぞれルビあり。志貴皇子=しきのみこ。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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