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1首鑑賞243/365

たまきはる宇智の大野に馬並めて朝踏ますらむその草深野
   中皇命(万葉集・巻第一・四)

     *

下の句のうねるような韻律に注目する。現代短歌ではそれほどみられない「らむ」だが、万葉集にはこれでもかというほど登場する。現在推量の助動詞で、「今ごろ〜しているだろう」の意。だから現場にいるわけではないのだが、上の句のイメージを引き継ぎながら「朝踏ますらむ」の迫力、そして「その草深野」の彩色によって1首が映像鮮明にたちあがってくる。「らむ」は連体形で「その草深野」にかかるのだが、あるいは終止形と同形であるから四句切れのようにもおもわてくる。「その」というひと呼吸も、そう思わせる一因だろう。四句までの情景に「その草深野」と重ねることによって、みごとにイメージが更新されている。

asa humasu ran sono kusahukano

ちりばめられたS音が流れるようなリズムを支えつつ、しかしそのなかに、第四句の末尾「らむ」、それから結句、体言止め「深野」の「の」の音が印象強くひびいてくる。

     *

引用は伊藤博[訳注]の「新版 万葉集 一 現代語訳付き」(KADOKAWA)より。宇智=うち、並=な、朝踏=あさふ、草深野=くさふかの、とそれぞれルビあり。中皇命=なかつすめらみこと。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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