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1首鑑賞233/365

ある人は亡き人をよぶ亡き人はある人のなか八月の朝
   森ひなこ『夏歌ふ者』

     *

はげしい戦渦を生きのびて「ある人」、帰ってきて「ある人」、また、戦争ののちの世に生まれ生きて「ある人」。無数の「或る人」をおもうこともできるし、そうだとしても、「よぶ」ことができるのは皆「有る人」であり「在る人」である。リフレインを通過することで、「或る人」が「有る人」「在る人」へねじれていく。さまざまな立場から「亡き人をよぶ」八月である。八月の朝、とまで言っているのでたとえば「八月六日」や「八月九日」、午前八時十五分や、午前十一時二分がおもいおこされる。

「ある人は亡き人をよぶ」——につつづけて「亡き人はある人」をどうするのかという形にリフレインは展開しない。「亡き人はある人のなか」というふうに重ねて、述べなおされる。そのことによって「亡き人」の存在がいや増す。「亡き人」はとわに「亡き人」であり、「亡き人」から「ある人」への視線はついに存在しない。そのことが、「ある人」のなかに反芻されつづける。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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