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1首鑑賞228/365

引くときより治るときこそ苦しくて八年ぶりの風邪に咳き込む
   栗木京子『ランプの精』

     *

子どものころみたいに、気づいたら風邪をひいていて、ひといきに熱があがって、あわてて早退する、ということがなくなった。そのぶん、ああ風邪引くなあ……とおもいつつ、なにもしないでいるとやっぱり引く、みたいな風邪が増えた気がする。初期症状で手を打てば、発熱にはいたらないものの、ずるずると風邪の症状をひとめぐりすることになる。気持ちのよくない日がしばらく続く。いずれにしてもすっと治ることがない。引いたときにはすでに遅い。

「引くときより治るとき」のほうが「苦し」い、というのはひとつの文法だが、感覚としてよくわかる(ここでは「こそ」に腕力を感じる)。治っていくときに消耗するし、治ったとおもってもまだ引く前にはもどっておらず、体をなじませたり、ぶりかえさないように気を使ったりして過ごしているうちに、いつのまにか治ってしまう。発熱も咳も、喉の痛みも鼻水がとまらないのも、頭痛も腹痛も、ただただしんどい。体力なのかなあ。

それにしても「八年ぶり」というのはすごい。たしかに毎年のように風邪を引く、ということはなくなった。さみしくもあるが、引いたら引いたできついし、治るまでなにもできないのももどかしい。時間がいっぱいあって、風邪引いて寝ている時間さえもたのしかった子どものころを、不思議のようにおもいかえす。子どものころは周りのみんながやさしくなるのがよかったのかな。やはり「八年ぶり」の風邪というのはなかなか想像がつかない。治るときの体力をおもう。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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