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1首鑑賞224/365

しもやけを知らぬ生徒が水虫と足を見せたり紫の指
   野村まさこ『夜のおはよう』

     *

しもやけの手や足のぱんぱんに腫れたのを、いつごろまで見ていただろうか。小学生、中学生のころ、冬になると必ずしもやけになる子どもが何人かいて、しかしはたではどうすることもできず、おびえていた記憶がある。「紫の指」が、そのいかにも痛々しい光景をよみがえらせる。

子どもには、思っていることをそのまま、その通りのことばや態度では示さない、ということが往々にしてある。と言っても、歌集を読むとこの「生徒」は高校生なのだろうから、もはや子どもかどうか。それでも、本当に言いたいことや思っていることと、自分がつかえることばや表現や態度との差につくづく戸惑い、苛立ちながら、声を絞りだすようなところがある。じつに身に覚えがある。

このうたでは、たんに「しもやけ」を知らず、ほんとうに「水虫」だとおもっていたのかもしれないが、「しもやけ」と知りつつ「水虫」と言った生徒、「しもやけ」を知らずしかし「水虫」でないともわかりつつ「水虫」と言った生徒、「しもやけ」か「水虫」かもわからずとりあえず「水虫」と言った生徒を、一方では想像する。しかし、ともかく、「水虫」と言って差し出したその足が、コミュニケーションの回路をつないだ。そしてその〈点り〉が、一首のなかにあぶなげに存在している。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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