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1首鑑賞220/365

また母の咳がとまらず午前より午後あぶらぎる蟬声のなか
   小島ゆかり『六六魚』

     *

きのう、きょうと夕立が降った。昼はそうとうに暑いのだが、夜すこし涼しくなる。蟬声はあいかわらず激しい。掲出のうたに出てくるのはむろん油蟬だろう。その蟬声を「あぶらぎる」といっておもしろさ以上に説得力があるのは奇妙だが、「午前より午後あぶらぎる」というディテールがよりそれらしくおもわせているのかもしれない。たしかに午前と午後では蟬声にもいくぶんちがった印象を受ける。その声が「母の咳」をかきけすようにうるさい。しかし「母の咳」もとまらぬ。えんえんとつづく苦しい時間が生々しく痛い。「また」であるから、夏のあいだ、いくどとなく繰りかえされる光景なのである。ただじっとしているしかない、その切ない時間をおもう。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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