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1首鑑賞218/365

とんかつはジュッと揚がりてあかねいろ迷ひ道して子にかへりたし
   小島ゆかり『六六魚』

     *

夕どきの帰り道を想像する。知らぬ家の台所でジュッと音をたてて揚がるとんかつ。いいなあ。なつかしい匂いや音や時間がよみがえる。暗くなるとはやいから、すこし早足になる。「あかねいろ」がしだいに藍色にかわっていって夜がくる。途中、「とんかつ」の色もうっすらとあるか。わが家の夕食が気になりながら家路をたどる。

「迷ひ道して子にかへりたし」はそういうなつかしい子どものころを振り返るこころだが、「迷ひ道して」というところにひとつ屈折がある。おもいだすのは次のうた。

海に来て道に迷えるうれしさの郷愁に似れどふるさと知らず
   馬場あき子『地下にともる灯』

迷子のこころぼそさ、無事に帰り着いたときの安堵、それらをふくむ子どもの視線やその空間の感触。そういういっさいが「うれしさ」や「郷愁」、「子にかへりたし」へつながっていくのだとおもう。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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