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1首鑑賞217/365

ありふれたしかし未知なる人生の 下の娘が母になる夏
   小島ゆかり『六六魚』

     *

かつて〈人はみな馴れぬ齢を生きている〉※1とうたったのは永田紅だが、人生というのはたしかに「ありふれた」ものであり、しかしだからといってそれがよく知ったものではまるでない。わがこととして生きるとき、どのこともどのことも「未知」にちがいない。まさに〈僕の前に道はない/僕の後ろに道は出来る〉※2である。

上の句の末尾、〈の〉はいったん言い差しておいて下の句へのバネとなる働きをもつ。一字の空白には「たとえば」を補うと意味明瞭。「下の娘が母になる」なんてことはそれこそそこらじゅうにあふれているが、しかしわがこととしては、おどろきであり新体験であり「未知なる」ものである。その新鮮な感触、捉えなおしが一首を貫いている。

おなじ歌集には次の1首がある。

母といふこのうへもなきさびしさはどこにでも咲くおほばこの花

     *

※1 人はみな馴れぬ齢を生きているユリカモメ飛ぶまるき曇天(永田紅『日輪』)
※2 「道程」(高村光太郎、『道程』、青磁社、1947年、pp.276-277)
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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