FC2ブログ

1首鑑賞207/365

傘をさす一瞬ひとはうつむいて雪にあかるき街へ出でゆく
   藪内亮輔『海蛇と珊瑚』

     *

 傘をひらかんとしてひとは一瞬うつむく。言われてみると確かにそうかもしれない。傘を地にむけてひらく場合はそちらを見るのでおのずから「うつむく」ことになるが、天にむけてひらく場合も手元を見るからか、やはり「うつむく」ような気がする。あるいは反動がそうさせるのかもしれない。いずれにしてもその一瞬の発見が、そこでおわらずに「街へ出でゆく」へまで展開していくところに、1首の力がある。さりげない一場面である。そしてごく自然な流れのなかに、発見がうめこまれている。うつむいて狭くなった視野と「雪にあかるき」の対比がまぶしい。苦しいほどにまぶしい。そしておもいだすのは

雪に傘、あはれむやみにあかるくて生きて負ふ苦をわれはうたがふ
   小池光『バルサの翼』
行きて負ふかなしみぞここ鳥髪(とりかみ)に雪降るさらば明日も降りなむ
   山中智恵子『みずかありなむ』

のふたつのうただ。「うつむいて」に「生きて負ふ苦」あるいは「行きて負ふかなしみ」のこころがかさなって映る。
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

最新トラックバック

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR