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1首鑑賞205/365

夏雲は夏雲を率(ゐ)てしづかなり 愛はひとりにとどまるのかな
   藪内亮輔『海蛇と珊瑚』

     *

梅雨があけて、一気に夏になった。気温がぐっとあがって、空はいかにも夏のそれで、入道雲が湧き立ち、蟬の声も強く耳に残るようになった。「夏雲」を辞書で引くと、「夏に立つ雲。夏の雲。入道雲・夕立雲・雷雲など。」(「広辞苑」第六版)とある。昼の時間、体を回転させて見渡してみると、連なるような夏の雲をみることができる。すっと刃をさしいれて切り出したような雲の底と、どこまでも膨らんでいきそうな雲の頭。大小さまざま立ち並ぶ。「率る」という動詞がいかにもふさわしい。夏雲が夏雲を呼び、膨張し、また次の雲を呼ぶ。この「しづかなり」は窓外の景色をおもわせる。絵のように「しづか」な夏の雲を眺めている。

その連想で、「愛はひとりにとどまるのかな」とこぼす。愛が愛を呼び、膨張し、また次の愛を呼ぶ——ということがあるか、ないか。「率る」に照らして「とどまる」がぐっと力を帯びている。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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