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1首鑑賞195/365

ひとりは防寒ひとりはかっこいいと思いフードをかぶったふたりができた
   宇都宮敦『ピクニック』

     *

ちいさいころ、フードはかぶるなと言われていた。理由は言われなかったけれど、お行儀が悪い、ということなのかな。ポケットに手を入れたらいけないのは転んだとき手がつけないから、と言われて、実際そうなって痛かったこともあるので少し納得していたけれど、フードのことは、今でもあんまりわかっていない。フードのついた服を着なくなって長い。

雨をしのぐとか、寒さを防ぐとか、そういうとき以外、フードは飾りで、なんでついているのかいまいちよくわからない。ついているからにはかぶるのか、それとも装飾はそれとして、だらん、と背にたらしておくのか。かぶっている人をそんなに見ない。それで「ひとりは防寒」のためにかぶり、別の「ひとりはかっこいいと思い」かぶる、ふたりがいる。

歩いていてすれちがった、とか、向こうの方に見える、というのではなく、いま「できた」というところが、このうたのおもしろいところ。自分のことか、そうでないにしても、事情のわかるふたりを見ているのだ。同じことやっていても、事情はじつに様々で、けれども、同じことやっている、という見た目は変わらない。そういう現場が、たったいま生まれたことの、できたての、文脈のまだない、尊さのようなものが滲んでくる。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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