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1首鑑賞188/365

消しゴムでけされる兄さん ああこれであなたはわたしだけの秘密だ
   安井高志『サトゥルヌス菓子店』

     *

消しゴムで消されていなくなってしまった兄さん。兄さんのことを知っているのはわたしだけで、わたしが知っていて思いえがくところにのみ存在する兄さん。誰のところへも行きえず、ずっとわたしだけのもの。「ああこれで」には「やっと」「ようやく」のおもいが滲む。優越感もあるが、なにより安堵の気持ちがおおきい。これで気をはらずにすむ。好きなだけ、わたしのそばに置いておける。どこへゆくこともない兄さん。

けれども、「けされる」であって「けされた」ではない。安堵するにはすこし早い。わたしのなかからも、たちまち消えてしまうかもしれない。あるいは消しゴムで消されたくらいでは、いなくならないかもしれない。にもかかわらず「ああこれで」が漏れてしまう。ここに、おもいの強さがある。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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