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猫のうた

猫がかわいい、というのは、まさにそうおもっている人と(比べようもないが)比べると、まさにはそうおもっていない。けれども、そうおもう瞬間はある。また、うたのなかの猫は往々にしてかわいい。

八月の窓辺でニャンと鳴くことあり君にも思ひ出がありますか
   小島ゆかり『さくら』
君は君で切ないことがあるだらうわたしの足に尻尾を載せて
   同『純白光』

飼い猫だろう。「君」という呼びかけに、おのずと距離感がにじむ。2首は対称的な作りになっていて、

 八月の窓辺でニャンと鳴くことあり→君にも思ひ出がありますか
 君は君で切ないことがあるだらう←わたしの足に尻尾を載せて

という具合に、いずれも「猫の様子」とそれに対する「呼びかけ」で出来ている。猫には「思ひ出」や「切ないこと」を思わせる仕草があるのだろう。

新幹線から見えたネコ 新幹線からでもかわいい たいしたもんだな
   宇都宮敦『ピクニック』

まちで猫を見かけることがある。夜道で急に姿をあらわしてぎょっとすることがある。このうたは、「新幹線から見えたネコ」。手に触れて愛でる距離からはずいぶん遠い。さーっと過ぎ去ってしまう光景の、遠くに一点のネコ。「たいしたもんだな」とおもう。

(たま)といふ凄き名前をもつてゐるやばい奴だぜ猫つていふは
   藪内亮輔『海蛇と珊瑚』

もうひとつ抽象的に「猫つていふ」もの全般をうたう。犬の「ポチ」、猫の「タマ」というのは、実際にそういう名前のついた犬や猫を見かけることがないくらいには、〈普通の〉名前である。その「タマ」を「魂」と見透かし、「凄き名前」と呼ぶ。その眼力、もの凄い。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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