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1首鑑賞178/365

きみといふ人称少し似合はなくシャツうしろまへに着るうちのひと
   馬場あき子『あさげゆふげ』

     *

「きみ」ではないと言われ、「うちのひと」と呼ばれているのは岩田正だろう。短歌のなかで人称をどうするか、という問題について、わたしは感覚的に合う・合わないで選択をしていて、それはその人との関係性によるところが大きいのだけれど、このうたはまさに「少し似合はなく」がその感覚を言い当てている。「シャツうしろまへに着る」ちょっとなさけない「きみ」を、いつの日か「きみ」と呼んでいた日があったとして、けれども今、この眼前にいるその人をそうとは呼べない、そういう心理だ。

「きみ」と「うちのひと」という呼び方を並べたとき、どちらがより親密さをあらわしているか、と問われると困ってしまう。外からは区別が難しい。「親密さ」はほかの指標、たとえば「尊敬」や「軽蔑」の度合いに変えてみても、同じことだ。けれどもこのうたにおいて、「きみ」ではなく「うちのひと」を選んだこの人のなかでは、なにかが感覚的に、決定的にちがう。そのはっきりとしていてしかし気分的なものが、1首のなかにただよっている。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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