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久田恒子のうた

「やまなみ」誌から近作21首を選んで紹介します。
(まずはうたのみ。余裕ができたら何か書いていきます。)

     *

百歳まで生きてと孫の便りあり嬉しいけれどそれは無理です  ’15/2

卒寿とはかういふことか足腰の痛みに加へ癌まで始動す  ’15/12

撮りくれしデジタルカメラを覗きこむ私こんなにお婆さんなの  ’16/3

誕生日にまた改めて書きなほすしがない遺書の薄き墨いろ  ’16/6

離れゆくもの多きこの世に律義にも従かず離れずひとつわが影  ’16/8

相槌を打つ人そばになきことの寂しさ埋めてくちなし匂ふ  ’16/12

しみじみと露のわが身を思ひをり仰ぐこよひの星の無限に  ’17/3

風強しまさかまさかの九十歳おめでたいのかめでたくないのか  ’17/5

山の端の落暉うつくし子供らの縄の電車も終電となる  ’17/6

かゆき所に手が届くとはこの事か美容師に頭洗はれてをり  ’17/8

わたくしも連れて逃げてよ非常口へみちびくマークの緑のをとこ  ’17/11

双六の上がり間近の齢にて足踏みしたいがさうもゆくまい  ’18/1

超軽い庭鋏買つたと嬉し気な夫の顔顕つ使はず逝きぬ  ’18/2

こはれゆく友を見舞ひてわたくしが私であるうちに逝きたし  ’18/6

あれも輪廻これも輪廻と夜の庭のいのち短きものの声聞く  ’18/8

「大丈夫?」かつては母に言ひしこと今はむすめが幾度もわれに  ’18/9

目眩してこのまま覚めぬを願ひつつ寝ねしベッドに朝の日の射す  ’18/11

三万日とうに過ぎたるわがよはひ秋思の窓にほほ杖をつく  ’19/1

くさむらに聞きし仔猫の鳴き声が床につきてもわれを呼ぶなり  ’19/2

救急車に伝へることを書きておくひとり暮しの夜のもがり笛  ’19/4

「ありがたう」掌にでも書いておかうかな今際に声の出ぬ日の為に  ’19/5

     *

うたの後ろの'XY/Zは「やまなみ」20XY年Z月号からの引用を示しています。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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