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1首鑑賞174/365

いのちもて水はひびけり滝の音波の音就中春のせせらぎ
   岩田正『柿生坂』

     *

こういう素朴とも言える、「いのちもて水はひびけり」といった大きなうたい方のうたが、この歌集にはいくらかある。たとえば

ひさしぶりのブラームス二番演奏を追へばこころのメロディーも鳴る
ちんどん屋鉦うち鼓うち街頭を廻れりしがない人生廻る

における「こころのメロディーも鳴る」や「しがない人生廻る」のようなフレーズである。掲出のうたにも共通することだが、ひろい意味でのリフレインがあって、それが大きなフレーズに仔細を与えているようだ。実際の「演奏」のみならず「こころのメロディー」も鳴るのだし、「ちんどん屋」のみならず「しがない人生」も廻るのである。そして、「滝の音」「波の音」などいろいろ水の音はあるが、そのなかでも就中(なかんずく)、とりわけ、「春のせせらぎ」にいのちのひびきをおもうと言う。この差し挟まれた「就中」に高揚感があって、「春のせせらぎ」そのものはささやかなのに、きらきらしい水面と水の音とがたちあらわれる。水流のうごきがまで見えてくるようだ。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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