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1首鑑賞169/365

夕闇(ゆふやみ)はほのあかりつつ山のうへにあはあはと大き月いでにけり
   斎藤茂吉『ともしび』

     *

昨日(もう一昨日だが)は満月で、ストロベリームーンという名前のついていたその月が、酒場と酒場のあいだの路地から見えていた。夜というのはおもったほどには晴れていないもので、そのため月を見る機会というのも実に少ない。昼の太陽のほうはよく見るのになあ、とおもうのは、たんに夜は寝ている時間が長くてそもそも空を見ないから、ということなのだろうか。

この1首は、日が沈んだあともしばらくのこっていた茜が空から消え、一瞬もっとも闇が深くなったのちの、月のあかりをうたっている。「山のうへに」「あはあはと大き」と少しずつ音をはみだしながら、ゆったりとうたわれ、結句にしても「月いでにけり」と余裕のあるおさめ方になっている。今でも街灯や家のあかりがつく寸前、というのはちょっとびっくりするほど暗いことがある。その夕闇が、大きな月のあかりによってほんのりと明るんでくる。安堵のおもいがする。そのうち闇に目が慣れてくるのだが、それまでのわずかのあの感覚を、ひやひやと思い出しながら読んだ。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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