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1首鑑賞168/365

いそぎ行く馬の背(せ)なかの氷(こほり)よりしづくは落ちぬ夏の山路(やまぢ)
   斎藤茂吉『ともしび』

     *

しづくが落ちた、というひとつ場面が印象鮮明な1首。「夏の山路」のスケールと対置されることによって、「しづく」の存在感が増しているようだ。その「しづく」の、いかにも潤いをふくむ感じが、今度は「夏の山路」の陽にかわける様を思わせる。馬が行き、人が行きして路は埃っぽくなっている。

「しづく」と「夏の山路」が相互に作用しあって光景をあざやかにしていく、動的な1首だ。「いそぎ行く馬」からこぼれおちて、夏の山路にやがてかわいてしまうはずのひとつ「しづく」が、しかしいつまでもまばゆい光景のなかに再生されつづける。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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