FC2ブログ

1首鑑賞166/365

同居するゴキブリを叩きなどせねばまひるのろのろと死場所さがす
   馬場あき子『あさげゆふげ』

     *

「越冬するゴキブリ」一連から。この連作は次の一首で始まる。

テレビ台の裏にゴキブリは棲みをりて深夜わが前を静かに歩む

ゴキブリが出たからといって慌てるわけでもなく、実に淡々としている。「棲みをりて」であるから、日頃から見て知っているのだろう。ゴキブリのほうも絶妙の間合いで「静かに歩む」。たしかに「同居」という距離感だ。もちろん「叩きなどせ」ぬのである。そういうわけで、「まひるのろのろと死場所さがす」ゴキブリである。

われの眼にとまりてふとも居竦(ゐすく)みしゴキブリはやがて疾走したり

掲出のうたのひとつ前に、こんなうたがある。気配を察知して一度は動きを止めたゴキブリが、引き返すにしても突き進むにしても猛烈な勢いで再び動きだす、そのさまがリアルに再現されている。

山積みの本の隙間にて子を産まん雌ゴキブリのつややかな翅
致し方なし寒き日も温かき部屋に同居し冬越すゴキブリ

ゴキブリと「同居」と言う背景には、こまかなディテールがあることをおもった。
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

最新トラックバック

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR