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1首鑑賞158/365

急ぐなよころぶなよ 君が進みゆく進路には大きな犬が寝ている
   佐佐木幸綱「小さい人」『短歌研究』2019.6月号

     *

「急ぐなよころぶなよ」という声かけに不安になりながら読んでいくと「君が進みゆく進路には」ときていよいよ不安が大きくなる。不安、というのは声かけにこもるメッセージや激励を予感してのことである。不安になるというより、身構えてしまう、と言ったほうが正確かもしれない。佐佐木幸綱の歌集で言えば『黄金の獅子』あたりのうたが念頭にある。

ところがこのうたの場合は「大きな犬が寝ている」というふうに展開する。よかったよかった。身構えた分、反動は大きい。たのしいうただった。ほっとする。「君」とは孫のことだろう。「よちよち歩き」の「小さい人」のその先に、大きな犬(「テオ」かな?)が寝ている。それだけのことだった。

いや、しかし、「大きな犬が寝ている」と言われたとき、読者のわたしははっきりと「小さい人」の目線で「大きな犬」の映像を思い浮かべてしまった。だから、なんというか、ちょっとびびった。犬でかっ。「急ぐなよころぶなよ」の声かけがわたしに向かってやってきて、「君」と言われたときに、すでにその背後からすーっとわたしが入り込んで、わたしは「君」になってしまっていた。メタにうたを読んでいるつもりが、しっかりと取り込まれていた。びっくりする。

いつまでも「大きな犬」の映像が消えない。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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