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1首鑑賞155/365

雀呼ぶために懸命パンの屑あき子はあつめわれは飯干す
   岩田正『柿生坂』

     *

唐突の「あき子」におどろくのだが、むろん「馬場あき子」のことだろう。夫婦の生活のなかに「雀」の存在がとけこんでいて日常のものとなっている。「懸命」にはいくらかの誇張もあるだろうが、1首のなかにこういう種類のことばをとりこんでおもしろおかしく仕立てる、というのはこの歌集におりおり見られる方法だ。

朝かろくくる配膳車ああさうだここは病室われは重症

たとえばこの1首では「重症」と言って少しも症状が重そうでない。それは「ああさうだ」や「ここは病室」という視点とかかわりあって1首に作用するものだが、ひとつの特徴とも言えるだろう。ところで「ここは病室われは重症」のフレーズは「パンの屑あき子はあつめわれは飯干す」の感覚とかさなって聞こえる。「君も雛罌粟我も雛罌粟」か。そういう韻律的采配とあいまって、雀の餌作りにいそいそと励むふたりの姿が慌ただしく浮かんでくる。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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