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1首鑑賞148/365

おさらひのつもりで妻にさよならと言へばにはかに悲しみ溢る
   岩田正『柿生坂』

     *

今際にベストの「さよなら」が言えるように、イメージトレーニングよろしくちょっと言ってみたわけだ。「おさらひのつもりで」に小学校も低学年の雰囲気がこもる。なかなかこんなことやらないだろうと思うし、それを「おさらひのつもりで」なんて言っているところも、なんだか尋常でない感じがする。けれども、このおどろけるようなところが岩田正のうたにはあって、だからこそ「にはかに悲しみ溢る」が説得力をもつ。「ちょっとやってみた」つもりが、思いがけず、それらしくなってしまった。その落差に、当の本人もおどろいている。

さりげなく別れきにしがおそらくはこの友とも永久(とは)の別れとならむ

「友」との現実的な別れもある。「さりげなく」別れたが、「また」はないだろうと振り返る。妻の場合には「おさらひ」をして練習してみるけれど、友の場合は「さりげなく」である。ここに「友」との距離感、「妻」との距離感がおのずから滲む。友とは友との別れ方があり、妻とは妻との別れ方がある。そこに当然、善し悪しのちがいはない。差異を見つめることで、それぞれの距離感がよりくわしく届いてくるような気がする。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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