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1首鑑賞127/365

秋はきらい 光に瞼を揺らすうち折り目ただしく深まってゆく
   大森静佳「数えきれないうつくしい穴」『Sister On a Water』vol.2

     *

たしかに秋は「深まる」ということばとともにある。冬は厳しくなり、春は過ぎ去り、夏は終わる。けれども秋だけは「深まる」。夏から秋へ天候おだやかになり、また、木々の葉は色づき、実をつける。収穫の秋、ということばもあるが、いかにも充実とか結実とか深まりといったことばがふさわしい。それゆえ「秋はきらい」、ということだろう。

ただ、それなのに、「光に瞼を揺らす」「折り目ただしく」「深まってゆく」のどれをとっても嫌悪感が浮かんでこない。むしろ賞賛のようでもある。そういうところも「きらい」の所以か。「きらい」と眼差しを向ける「秋」の、「きらい」と言うことを阻むようなところをこそ、「きらい」なのかもしれない。初句切れの直情と、第二句以降でひらかれていく秋というもののありようが対照的で、ながくこころに残る。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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