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1首鑑賞111/365

地下鉄の夜の車窓にならぶ顔 むかし海から来たわたしたち
   小島ゆかり『六六魚』

     *

小島ゆかりには「むかし」をうたうという印象がある。そうおもって歌集をすこしもどってみると、

「昔は」と言ふたびわれを戒むる娘はむかしわれが産みたり

といううたがあってわらうのだけれど、こういう平然もまた、小島ゆかりのうたの特徴と言えるだろう。ほかにも

石鹼はむかしの朝の匂ひなりむかしの朝の父のひげ剃り
     『馬上』

というふうに「むかし」のうたを挙げることができる(探せばもっともっとあるだろう)。「むかし」の指す具体的な時間や距離はさまざまだが、「むかし」と言って捉えるときの「むかしあって、今はもうないもの」という感触は共通してある。はじめにあげた「むかし海から来たわたしたち」と言うときの「むかし」はもっとも古く、人類の誕生よりもはるか「むかし」ということになる。夜の窓にうつる列車のなかに居並ぶ人の顔のそのつらなりから、ひといきに「むかし」へ意識がとぶ。そこに失われたもの、をおもうようにして。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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