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1首鑑賞99/365

蚊取り線香にふらふらとして落ちにける蚊を寝ながらにわれは見ている
   花山周子『林立』

     *

前回の蟬のうたは、蒲団の「中」とあって、蒲団にもぐっている印象があったが、今回のこのうたは、蒲団から顔を出していて、横になって蚊を見ている。いや、たんにフローリングや畳やソファーにごろん、と寝転がっているだけかもしれないが、蒲団に入っているとしたら、顔を出している。

「蚊取り線香にふらふらとして落ちにける」は、どのくらいの時間だろう。実際にはほんの少しの時間かもしれないが、ずいぶん長く見ているなあ、という印象をもつ。少しずつ線香から立つ煙にダメージを受け、ふらふらとしつつ、ついにはぽ、っと落ちてしまった。その一部始終を見ることなんて、そんなにはないだろう。寝ながらにして、ぼんやり、なんとなく一部始終を見てしまった。はっとする。「われは見ている」その目は、落ちてしまったその蚊の、まだかすかに手足や羽を動かしているところまでをも、じっと見続けているようだ。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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