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1首鑑賞98/365

一斉に蟬の鳴き出す時刻あり蒲団の中に目を開けて聞く
   花山周子『林立』

    *

それまでしんとしていたのに、あるとき一斉に蟬が鳴き出す。そういう瞬間があることを、体験的に知っていて、あるいは事実として知っていて、その瞬間、いま、というのを聞いている場面である。「蒲団の中」だから早朝だろう。目は覚めているのだが、蒲団からは起き出ていない時刻。「目を開けて」聞く、というのが印象的だ。蟬が鳴き出したから目が覚めた、というのではない。目が覚めて、まだ音のない朝を居て、そのうち蟬が鳴き始めることを予感しながら蒲団の中にいるのだ。それで、わ、っと鳴き出す。か、っと目を見開く。そのまなこの生々しい感じが、蟬の音と同期しているかのようでもある。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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