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1首鑑賞93/365

校庭に地割れは伸びて雪の飛ぶ日暮れを誰も立ち尽くしをり
   梶原さい子『リアス/椿』

     *

校庭に地割れが起こるほどの大きな地震。地割れは「伸びて」という動詞が、そのもの凄さを伝えてくる。いままさに眼前で、音を立てながらばりばりと大地がひび割れていくさまが思い浮かぶ。おそろしい。身震いする。立ち尽くすよりほかに、なにもできない。雪の飛ぶ日暮れである。どんどん気温が低くなっていく。暗くなっていく。余震がくる。状況がわからない。心身ともに、疲れきってくる。どうすることもできず呆然とする。という、進行しつつある状況を、「伸びて」という動詞が、ここでもまた、想起させる。

このうたの次に、

「釜石に六メートルの津波来る」そののちをもう聴こえぬ知らせ

とある。東日本大震災である。津波が来るという報せ、「六メートル」という数。そののちどうなったのか、続報がない。津波は来たのか、来ていないのか、来たとしてどんな状況なのか。猛烈な警報の声、音だけが耳に残っていていまなお不安を掻き立てる。「もう聴こえぬ」が、いくつものしかかってきてもうずっと、「誰も」を「立ち尽く」させる。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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