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1首鑑賞91/365

触れてみればかすかに振動する春の皆ぼさぼさになってゆきます
   石井大成「春と自我」『九大短歌』7号

     *

春そのものにタッチしようというところがまず変で、けれども春夏秋冬で手に触れてじかに確かめられそうなのは、確かに春かもしれないなあとおもう。たんに、うたに説得されているだけかもしれないけれど。ほわほわした生きもののような手触りがある。かすかに振動する春。その春のなかを、皆ぼさぼさになっていく。ぼさぼさ、というのは髪の寝癖のようなもの、春の眠り、ゆっくりすすむ時間、あたたかくなった陽射し、まだ冷たい風、若葉のしゅわしゅわとひらきつつあるところ、などなどを引きつれて、しまりのない、春の気分を感じさせる。

桜の木の下で眠れば僕の型ができるビニールシートの上に

連作のなかにはこういう見立てというか、発見のうたもあって、その良さもひとつにはあるけれど、1首をどこかで放り出す、感情や気分をぶちまける、声をのせる、といったうたい方のうたに、もっと魅力がある。

たこ焼きをつぎつぎと裏返してはもっとちゃんと言いたかったすべて
左手に右手を重ねるだけでカニ。好きだと言ったら笑ってどうぞ
ホー厶に立ち風を待ったら風が吹く意外とどうしていいかわからん
こちらこそ会えてうれしかったです、とか言えよ俺 桜のトンネル

韻律にはまだ完全にはノれないところがあって、そこは、どういうふうになっているのか、ということをもう少し考えたいとおもう。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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