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1首鑑賞89/365

夕陽さすスイッチバックの古き駅少年ひとり降りてゆきたり
   曽川文昭『スイッチバック』

     *

素朴なつくりの1冊で、表紙の遊びごころも簡潔でたのしい。1首のなかに必要十分な情報がふくまれており、それが連作の整理整頓と合わさってどこか新鮮に、なめらかに1冊を読み通させる。

掲出歌は、熊本旅行の折の1首のようだ。少年は現地のひとだろうか。目的とするところ、降りる駅のちがう旅行者と現地者とがひとつ乗り合わせるのが鉄道というもの。そのおのずからなる差異がスイッチバックの駅で交差する。印象ふかい光景だ。

さす・スイッチ、バック・古き・駅、と音の連関なめらかに上の句があり、そのために体現止めの「駅」がしんとして動かない。下の句、そこに少年の動きがすっ、とあらわれる。たちまち列車が動きだす。眼差しだけがそこに残って1首となった。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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