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1首鑑賞87/365

終電の車内に雪が降り積もる 眠りましょう あと百年は
   安井高志『サトゥルヌス菓子店』

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終電の車内に雪が降り積もっていくなかで「眠りましょう」という呼びかけは、すごくよくわかる。いかにも「永眠」という感じがあって。ああ、それならいいかなあ、とおもう。でも、そのすぐあとに「あと百年は」とあっておどろく。そうか目覚めることが想定されているんだ。百年たったら目覚めるのか、もう百年でも二百年でも眠るのか。あるいはずっと目覚めないのか。わからないけれど、とりあえず、ひとまず、あと百年は、眠りましょうということだ。永眠、というと一瞬だが、百年眠るのはずいぶん長い。そのあいだ、雪が降りつづけるのか季節はめぐるのか。終電は始発になったり、折り返し運転したり、もうずっと車庫にあるのか、延々と百年のあいだ終電としてうごき続けるのか。「眠りましょう」という声は、そういう想像をいったんは掻き消してくれる。いいから眠りましょうよ、と。いつか目覚めるとしても、当分のあいだは、まああと百年くらいは、眠りましょう。眠るといいですよ。目覚めたら、そのときまたうごきだしたらいいですよ。そういうふうに声はきこえる。あるいはここで、眠ってしまったらもう二度と目覚めないような、死をそそのかすささやきなのかもしれないが。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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