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1首鑑賞86/365

卓上にこほり枕の口金(くちがね)が置かれてありてむかしのごとし
   有川知津子「大縄跳び」『COCOON』11号

     *

一連をとおして、密になりすぎないおおらかな文体がうたの内容を伝えてくる。なかでこの1首は第四句「置かれてありて」のじりじりとした引き伸ばしと、あっけらかんとした結句「むかしのごとし」がうたのあじわいになっている。

風邪などで発熱したとき、氷枕のうえに頭を載せて熱をやわらげる。氷枕という名付けの直截が発する雰囲気と、口金という語がよく調和し、それが第四句でいよいよ存在感をもって映る。むかしのごとし、というのもまさにそのままなのだが、「こほり枕」や「口金」あるいは「卓上」ということばとはおのずからひびきあっていてここちよい。氷枕そのものではなく、その口金だけが残って存在している、というところに、この1首の起点があるようにおもう。
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プロフィール

山下翔(やました・しょう)

Author:山下翔(やました・しょう)
▶︎1990年生。2018年、『温泉』(現代短歌社)を刊行。「やまなみ」所属。
▶︎お問い合わせ、ご依頼はs.ohsamay@gmail.com(@は半角に変えてください)までご連絡ください。

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